千円の商品があったとします。
売れないから8百円にする。
まだ売れないから6百円にする。
よく見かける一般的な様子です。
それよりも千円の商品に対して千5百円の商品を作った方が千円の商品が売れやすくなることはよくあります。
もっと言えば、千5百円、千2百円、千円の3種類の料金設定をすれば、千2百円の商品が最もよく売れます。
これ、松竹梅の法則、専門用語では「極論の回避性」と呼ばれる有名な購買心理の一つです。
おはようございます!普段は民宿&ダイビングショップの親父、コムサポートオフィスのアドバイザーもやっているガク(@kasumi_kadoya)です。
先日、ひどい新聞記事を目にしました。
4/3付福井新聞より
※上記リンク先が新聞社でないのは将来削除されないサイトにリンクをしている為です
突っ込みどころは2つあります。
価格上昇要因は「極」の問題だけではない
県水産課によると、16年度の越前がにの競り値単価(1キロ当たり)は5542円で、ズワイガニでは全国トップ。2位の兵庫県産(4702円)、3位の京都府産(4199円)を大きく上回っている。●●社長は「越前がには甘みが深い」と他産地との違いを強調する。
まず、越前がにの競り値単価が高いのは果たして「極」効果なのでしょうか。確かに当地でも「柴山GOLD」「香住PREMIUM(プレミアム)」、更には鳥取でも「五輝星(いつきぼし)」といった最高級ブランドガニのランクが存在しています。ちなみに表にすると以下の通りの判断基準になります。
柴山GLOD | 1.4kg以上・全体の1%未満 |
香住PREMIUM | 1.4kg以上・全体の1%未満 |
五輝星 | 1.2kg以上・全体の1.5%未満 |
極み | 1.3kg以上・全体の0.5%未満 |
大きいほど希少性が高いですし、全体の何%かは漁獲量次第です。
ちなみに県別漁獲量。
1位 | 兵庫県 | 1373t |
2位 | 鳥取県 |
1114t |
3位 | 石川県 | 524t |
4位 | 福井県 | 503t |
8位 | 京都府 | 81t |
いかがでしょう。数少ない最高級ブランドガニが価格の押し上げ効果となるのは確かですが、それだけの要因で価格は決まりません。何といっても価格の決め手は漁獲量です。2月の寒波云々はどこの県でも同じマイナス要因です。しいて言えば、大型船の割合が大きく関係しますが、それも結果としての漁獲量で判断できます。
柴山GOLDは我がまちのカニの価値を
引きあげてくれています
「常連さんに理解してもらえない」のは説明しないから
一方、客足が鈍る懸念から仕入れ値の上昇を料金に転嫁できない民宿や飲食店は多かった。坂井市で民宿を経営する鮮魚店●●●●社長は「料金は従来通りで営業し、利益はほとんど出ない状況だった。仕入れ値が上がったから値上げしました、と言っても常連さんには理解してもらえない」と嘆く。
民宿をやっている立場からひと言。
「常連さんには理解してもらえない」
という理論はおかしいです。
常連さんに対して値上げしにくい、お願いしづらい、という心理状態はわかりますけど。
常連さんだからこそ、理解してもらえる。一見さんほど理解してもらえない。だって、一見さんは説明をしっかり聞いてもらえる関係性がないのですから。
もう一つ大切なことは、常連さんに説明ができる”場”を持っておくこと。何もブログだとかSNSとは言っていません。ちなみに私は春の時点で以下のようなニュースレターをお客様にお送りしました。
乱暴な言い方をすれば、常連さんが納得して下さらないのであれば、それは自分の伝え方が不足しているのか悪かった。もしくはそのお客様が「常連さん」ではなかったかのどちらかです。
実際、高くなったからと離れていったお客様もあります。でも、残って下さったお客様の方が圧倒的に多いです。
カニの仕入れが4割5割上がっているのに千円UPぐらいで何とかなるレベルではありません。ちなみに私の宿も甲羅の大きさが13cm以上で1kg以上のカニを1枚使う特選プランは去年より3千円値上げしましたが、年末年始は前シーズンより5千円以上仕入れ価格が上がっています。2月の大雪の際は、年末年始レベルの価格が続きました。
特に今シーズンは野菜も高かったです。
「常連さんは聞いてくれない」なんて言ってる場合じゃないです。聞いて下さらない方は常連さんから外すぐらいで判断をしないと商売自体を続けていけない事態になっていたのです。
松竹梅の法則の話に戻ります
基準となる商品やプランに対して高いプランと安いプランを上下に作る。あるいは、基準となるプランの上2つ高いプランを作る。
仕入れが高くなったということは、それだけ商品価値が高くなっているということです。
「仕入れが高くなっても価格に上乗せできない!」
と決めるのは自分です。
こういった記事を鵜呑みにして値上げが出来ないって判断しないようにしましょう。
また宿泊業の場合、旅行業者からの価格ダウンや据え置きの要請があった時に仕入れが高くなっているのに要求を呑んでしまう傾向があるようです。
実はそれって誰も仕合せにしていません。旅行業者にちゃんと価値を伝えること。旅行業者は価格以外の点でユーザーに価格に見合った価値を伝えること。
この努力をするのに「松竹梅の法則」がヒントとなります。
3つのランクの商品(宿ならばプラン)を作ってみる。
価格の差は価値の差です。その差をどうやってつけますか?
価値づけをするのにどんな言葉で商品を表現しますか?
それを考えてみるだけでも安売りの呪縛から逃れるヒントが得られます。
値上げを常連さんが理解してくれないなんてことはありません。
理解してもらう努力を怠っている事業者が存在しているだけです。