週末ブロガーの今井ひろこです。
今週2月25日、26日の1泊2日(とはいえ滞在18時間)、宮城県気仙沼市の気仙沼DMO(※)こと(一社)気仙沼地域戦略へ視察コーディネートのお仕事に行ってきましたので、その報告です。
気仙沼DMOは数ある日本国内のDMOのなかで、最も成功していると私が思うDMOです。
(※)DMOとは
Destination Management/Marketing Organization(デスティネーション・マネージメント/マーケティング・オーガニゼーション)の頭文字の略。(Destination:旅行目的地)
具体的には
・地域ブランドをダイレクトマーケティングしていく地域全体での仕組み
・地域全体の顧客データベースを中心としたマーケティング活動
・マーケティングを継続的に進化させ地域にお金を呼び込んでいくこと
を行う組織です。(気仙沼地域戦略・森成人さん談)
今日現在、日本には、日本版DMOとして広域連携DMO8件、地域連携DMO54件、地域DMO40件(気仙沼地域戦略が該当)の計102件が登録されています。ちなみに豊岡市・香美町近隣では、豊岡観光イノベーション、麒麟のまち観光局、海の京都DMOが地域連携DMOに該当します。観光庁のリンク先をご覧下さい。
ご依頼はとあるメールから
今回の視察が実現したきっかけは、私へのメールから。
こんにちは。いつもFBやブログを見させていただきながら勉強させてもらっています。本当にためになります!
今井さんのブログに気仙沼DMO、クルーカードについて書かれているのを拝見しました。
唐突なお願いなのですが、もし可能なら気仙沼視察をアテンドしていただけないでしょうか?
(中略)
ダメもとでとりあえずお伺いメッセージします。
どうぞよろしくお願いいたします
m(__)m
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まーーーっ! 学んだことはブログでアウトプットしてみるもんです。(笑)
ご依頼頂いたのは豊岡市商工会日高支部の異業種交流チーム。昨年秋に観光カリスマ・山田桂一郎先生が豊岡市日高町に講演に来られたのです。
(このときの講演会)
(終了後、夫婦で山田先生にご挨拶)
講演の中で登場した気仙沼のクルーカードの事例がまさに、自分たちが目指す方向とほぼ同じだったため、気仙沼の関係者から直接話を聞きたくなったのだとか。
どうやったら相談できるのかと模索していたときに、偶然Facebookで、私が書いた気仙沼DMO森理事のセミナー備忘録ブログの記事を見て「今井さんなら繋げてもらえるかも!」とメールを頂いたようでした。
「2時間半があっという間やったわ!」の研修内容とは
視察では気仙沼DMO(気仙沼地域戦略)理事の森さん、小野寺さん、斎藤さんの「クルーカード実行部隊」3名からクルーカード運用についての話を中心に2時間半にわたって伺いました。
(気仙沼DMOの小野寺さん(左)森さん(中央)斎藤さん(右))
とはいえ、クルーカードの表面的な運用についてではなく、クルーカードを導入するに至ったベースになる地域経営についても学びました。さらに森さんと斎藤さんは私と面識があったので、ぶっちゃけ話もたくさん聞けました。やっぱ人脈って大事♪
※クルーカードとは…
主に気仙沼市内で使える磁気ポイントカード。地域経済に直接影響がある「地域消費額」を決済データとして取得できるようにしています。地元住民だけで無く観光客もカードを持つことができますが、カードを利用し決済できる加盟店は地元商店や事業者に限定していることが注目点です。(イオンやコンビニの買い物にはポイント付かない)
これらのデータから、どこで、どういう人がどれだけ何で使っているかも把握でき、リピート化を促すマーケティング活動を地域全体の活動として行うことができるようになりました。
端末は各加盟店が月3000円でレンタルし、プラスしてカードを見せた方の売上の3%(システム運営2%+会員へのポイント付与分1%)を徴集して、事業者側の受益者負担としています。2年でポイントが失効するのですが、その失効益を気仙沼地域戦略の運営費の一部としています。
「HowでなくWhyが、まちとして突き詰められるか」
森さんは制度面から、小野寺さんは店主さんとのやりとり、斎藤さんは制度も含めたデザイン設計についてのお話しを主にして頂きました。
本質を突く話がどんどん投下されていく中、参加者全員の心をわしづかみしたのは、この1枚のスライドでした。
クルーカードをやっていく上で、そもそも論。どういう課題を解決するために動いているのか、課題の可視化を行ったそうです。
現状課題は
・住民が減る
・地元の事業者が先細る(お金が地域から外に出ている)
地域を衰退させる理由はこのダブルパンチで、若い人たちが「ここに残ってもやっていけない」と外へ出てしまうことです。
やがてスパイラル的に事業者が厳しくなり、町の経済も厳しくなる、この悪循環を停めたい。この課題の前提を見詰めようとしないで、ただ単にDMO、クルーカードをやっても、事業が続いていかないと考えたそうです。
「HowでなくWhyが、まちとして突き詰められるか」
どうやって(How)、ではなく、なぜ(Why)この事業を進めていくのか。この課題を可視化させるのに、ものすごい時間がかかったと仰ってました。
気仙沼LOVEな人たちが一つの船に乗り、みんなで地域を上向かせて進もう!という意味で「気仙沼クルーシップ」とカードには記載されています。クルーカードはあくまで手段。目的は「どう地域消費を挙げていくか」。そのためのツールがクルーカードであり、気仙沼観光推進機構です。
地域経済を意識したツェルマットのスーパーでの話
スイス・ツェルマットへDMOの視察に行ったときに寄った、スーパーの卵売り場での会話で森さんは衝撃を受けたそうです。
フランスの輸入物の卵と地元の卵が売ってたのですが、地元の卵のほうが値段が倍するにも関わらず、そちらばかり売れていたとか。買う人に「どうして安い方を買わないのか?」と聞いたら、
「当たり前でしょ。安いのに飛びついて、地元のものを買わなければ、回り回って自分や親戚、知り合いの仕事が無くなる、倒産するってわからないの?」
ツェルマットの人たちは当たり前に地元のものを買って使い、よそから来る人に対してはブランド価値を出した上で、お客様も喜んで美味しいモノ食べて、リゾートに泊まって楽しくお金を使ってもらう。
岩と氷に覆われた資源の乏しいツェルマットでも、こうやって150年間の間に、自分たちの地域が主となり地域経済を循環させています。
ところが日本はどう? この逆で、一円でも安いモノをイオンなどの東京資本のスーパーで買ってしまいますよね?だから地元の商店が疲弊していき、倒産してしまう、それが一番の問題です。
質問コーナーではぶっちゃけ話も続々と。
クルーカード事業の導入では50数店舗からスタートしていますが、その時どういう風に店舗を口説いたのかなど、本音トークも興味津々な内容でした。
例えば、先ほどの質問では、まちづくりのために無償で協力してもらうだけでも苦労するのに、カードを導入するのに3%のコスト負担を強いて「一緒にまちのために商売していきましょう!」と伝えるって、地方の小さな商店では無謀に見えますよね。
だから、やる気に火が付ようなお店を説得したり、「そこのお店が入っているなら、自分たちも入ろう」と思ってくれるようなフラッグシップ的なお店など1軒1軒丁寧に訪ねてお願いしたそうです。
特に、事業がスタートする前に誘うわけですから、先がどうなるか見えない中で話をしていくのが大変だっそうです。
実情を聞いたら、復興需要が減り、移住者も引いてきているので、毎年1000人は人口が減ってきているのだとか。個店の総売上は減少局面にあるけど、顧客に占めるクルーカード利用者は増えているので、カードに対する店側の期待度も大きくなっていってほしいと仰ってました。
それ以外にも、導入したデータの活用度合いや、それを用いて作った今までに無い観光プランの開発話も含め、ここには書けない、オープンにできないようなことまでたくさん教えて頂きました。
車の中でもしきりに「最初は2時間半の座学って耐えれるかなって思ったけど、あと2時間半あっても全然大丈夫。そのくらい興奮した!」と参加者の方が仰ってました♪
「4ヶ月までに絵が見えた企画はうまくいく!」
「マーケティングデータを見て、今起こっている数字をきちんと見ましょう、わからなかったら顧客に聞いたらいいんです」と話が続いた中で、最後に大事なことを教えて下さいました。
「うまくいくプロジェクトは、言い出しっぺが自ら動いて、およそ4ヶ月くらいまでの間で絵や形になってるし、その企画は残る」
これだは「経験値」だけど、と前置きされてました。(笑)
地域で発散型のワークショップにありがちな、模造紙にポストイット貼って「こういうコトしましょう」という話になっても、その後「誰がやるの?」となり、形にならない。時間の無駄ですね。
とにかく小さなことでいいから、可視化させて実行する。その繰り返しで信用力がつき、事業が進めやすくなる、と仰ってました。
ランチもお三方が私たちと一緒に食べて下さって、より実践的な、ぶっちゃけトークをすることができ、参加者にとっても貴重な時間になりました。
視察させて頂いた(一社)気仙沼地域戦略の森様、小野寺様、斎藤様、本当にありがとうございました!
(視察団の全員が作った気仙沼クルーシップカードと共に)
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