私がじゃらんネットの販促パックを止めた理由~「販促パック」って効果あるの?

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14時出発0時帰宅。往復と滞在10時間で京都へ行ってきました。

京都にて
山陰近畿道が京丹後大宮まで延びて
京都が近くなってきました

おはようございます!普段は民宿の親父、コムサポートオフィスのアドバイザーもやっているガク(@kasumi_kadoya)です。

さて、今日は前々から宿事業者の皆さんに質問されるお話を書きます。

うちの奥さんも私も宿関係者の皆さんにとにかく聞かれることが多いのが

じゃらんネットの「販促パック」って入った方がいいのですか?

という質問。

じゃらんネット販促パック
有料契約のじゃらんネット販促パック

販促パックとは上記の販売促進ツールを有料で提供するというもの。じゃらんネット参画施設に宿ログやフォトギャラリー等のある宿とない宿があります。この違いはこの有料パックに入っているか否かです。

物理的に言ってしまえば、月2万円(税別)年間税込みで約26万円です。2000万円売上があればその割合は1.3%。1000万円だと2.6%。500万円だと5.2%です。手数料にそれだけ加算される。それを良とみるか否とみるか、です。そうなると売上規模の小さい小規模宿泊施設ほど厳しいということになります。部屋数が8室でも100室でも年間26万円は同じなわけですから。

とまあ、一般的な回答だと上記の通りです。でも、実際にリアルタイムで止めた時はそんな理由ではありませんでした。少なくとも当時、じゃらんネットからの売上は1千万円以上ありました。その段階で止めたって我ながら英断だったと思います(笑)。

まず販促パックを止め、それで1年間やってみた。で、販促パックを止めた1年後にじゃらんネットへの部屋提供も止めた。

だからと言って「なぜじゃらんネットを止めたんですか?」という質問はあまりされない。たぶん、じゃらんネットを止めるつもりのない人たちにとっては参考にならないから。あ、一応その理由は以前宿のブログに書きました。まあこれは参考程度に。

【重要】ネット予約は弊社自社サイトと楽天トラベルのみとなります

で、「なぜ販促パックを止めたのか?」は聞きたい人多いと思うので、当時のことを思い出して書いていきたいと思います。

販促パックは「広告」ではなく「ツール」

まず、販促パックは広告ではなくツールです。参画するだけでは一銭も売上は上がりません。機能を活用してナンボです。活用には工数がかかり、販促も調理も掃除も全てを家族でやらないといけない小規模宿泊施設には大きな負担になります。もちろん、それで効果が上がればそれで良いのですが、工数をかけるのであれば、自社ブログやお客様にお手紙やニュースレターを出すことに時間を割いた方が良いと思ったのです。

販促パックに入れば売上が上がる、と安直に思っている施設さんもあるようですが、ツールですから日々使いこなしていかないと効果はありませんし、お金を支払っている意味は全くありません。

ブログヘッダー冬
同じ宿ログを書くのであれば
自社ブログに工数をかけることに決めた

じゃらんネットの宿ログはSEO的に何の効果もありません。ヤフーやグーグルで検索しても出てきません。じゃらんネット内の検索窓でも宿ログは反映されません。情報量過多な今の時代、宿ログを見に来てくれるようなお客様はじゃらんネットを使い倒しているヘビーユーザーだけではないかと私は想像しています。宿ログの流入間口は非常に狭いのです。

販促パックは「差別化」しか生まない

私が販促パックを止めた理由。それは「差別化」ではなく「独自化」を目指したかったから。この違いは先述したリンク先をお読みいただければわかると思うのですがじゃらんネットは自社独自のウリをPRするようりも、他社との比較をしやすい構成になっています。お客様から見ると検討している数軒の宿を比較しやすいというメリットがありますが、事業者側から見ると価格や設備の有無が成約率に影響しやすい。もっと最悪のケースでいうと価格競争を煽られやすくなります。

販促パックでのメインは宿ログとフォトギャラリー。この2つは撮影にお金をかけられる事業者ほど有利です。小さな事業者ほどプロのカメラマンに撮影をお願いする負担は高いですよね。

料理写真
料理のコース写真などは配置、照明等
プロと素人の差が大きく出ます

パレートの法則というのをご存知でしょうか。80:20の法則とも言います。

販促パックは上位20%の大型宿泊施設を活かすために80%の中小宿泊施設がお金を貢いでいる構図になっています。ズバリ、勝ち組だけが更に売上を上げる制度であって、今集客に悩んでいる宿が販促パックに参画したからといって売上はすぐに上がりません。もっと言えば販促パックで売上をあげられる人ならば、最初から自社サイトや楽天トラベルで結果を出せているはずです。販促パックでできることは全て楽天トラベルならば無料でできるのですから。

一度始めると止められなくなるビジネスモデルには要注意

更に言うと、販促パックそのもののシステムだけではなく、じゃらんネット、リクルートの様々な販売手法の問題点に、私は気づきました。これは小さな宿が参画しては一生奴隷のような働き方をしないといけない、という危機感を持ったのです。

jalan net
リクルートが運営する旅行サイトの
じゃらんネット

皆さんは「売れる仕組み」ができれば、そのまま放っておいても売れる、段々とお金をかけなくても売れるようにしたいですよね。

私の場合、常連さんにダイレクトメールやニューズレターを送る。ブログを書く。お客様の声をいただき、それを紹介し続ける。この3つをやっていれば集客には困らないし、広告代はもういらない、というビジネスモデルを自分の宿で確立できました。

でも・・・例えば、15年ぐらい前までは繁忙期、雑誌「関西じゃらん」に税別24万円/月の広告を掲載したら200万円ぐらいの売上が確実にあがった時代がありました。大体、売上に対して広告費が15%くらいでした。でも、これは毎月税別24万円支払い、広告を出し続けなければならないし、リクルート側からいえばおいしい課金モデルです。

販促パックもそう。クライアントである宿が売上で結果を出そうが出さまいが、毎月税別2万円ずつ確実に入ってくる。結果の出ている宿はこれを止めると売上が落ちると不安になる。出ていない宿はこれを止めるともっと売上がなくなると不安になる。まさに麻薬のような存在。ゼクシィやホットペッパービューティーの仕組みを聞いた時も本質は同じだな、と感じました。投資した以上の成果をあげられる事業者はほんの一握り。他に集客手段が思い浮かばないから高額だけど仕方なく続けている(続けさせられている)感じ。

ゼクシィ
ゼクシィネットや
ホットペッパービューティーも同じ仕組み
雑誌との二重広告料で苦しむのも同様です

ポンパレとか雪マジ、温泉マジとかの「マジ」シリーズはもっとたちが悪い。一度安売りをしてしまうと、その後、価格を上げられなくなる。下手するとずっと安売りをし続けていかなければならないし、安売りによるブランド力低下にもつながります。事業者だけでなく、地域のブランド価値を下げてしまうのにも注意が必要です。

私は小さなお宿、小規模事業者ほどこの手の課金モデル、リースモデルには手を出してはいけないと思っています。効果が出たら出たで止められないし、出なかったとしても途中解約はできないのですから。

リクルートのビジネスモデルはその時だけの効果に対して、その後もお金を払い続けなければならないビジネスモデルが多いことを知っておく必要があります。

蛇足ですが、先日紹介した「観光立国の正体」の中にリクルートに対する山田桂一郎さんと藻谷浩介さんの見解が載っていました。これはもう、こんなこと書いていいのって内容。これに比べると私が今ここに書いている内容はマイルドな書き方ですf^^;

玉石混淆のリクルート

藻谷 ちなみに山田さん、リクルートはどう思う?

山田 評価は難しいですよ。旅行会社は人によって全く違うのですが、なぜかリクルートの人は同じ匂いがします。あの会社の面白いところかもしれませんが、ズレが出たときの方向が、「ああ、リクルートならこうズレるよね」というのがある(笑)。

(中略)

藻谷 リクルートは他の代理店よりずっとマシで、まだ地域振興とか地域の善し悪しが分かっている。しかしいかんせん、「大して質の高くないものを原価割れで大量に売る」というモデルを抜けることはできない。リクルートは「代理店販売率100%」みたいな旅館にぶら下がっているわけじゃないので、もっと自由にできるはずなんですか。

山田 そういうのが嫌だっていう人もリクルートにはたくさんいますよ。個人個人としては本当にスキルが高くて地域のことを真剣に考えている素晴らしい人たちがいて面白いのですが。社風ですかね?

藻谷 リクルートのレポートは面白いですよね。平然と自分の会社の利害に反する正論を書いてあったりして。でもこれも日本軍みたいなんですよね。俺は個々ならずも侵略行為に荷担しているが本当はそんなことはしたくないんだ、みたいな。

山田 でも、最近は会社としても長期的なスパンで地方と真剣に向き合うための部署を立ち上げたりしていますから、これまでとは違う新しいアプローチも生まれるかも知れません。

「観光立国の正体」より

上記は核心、結論の部分だけ引用しました。(中略)した部分に具体的事例が掲載されていますので興味のある方はぜひ本書をお手に取ってお読みください。

毎月課金モデルでお金を支払うが、投資したほどの売上は上がらない。でも、全く効果がないわけではないのでやめるにやめられない。そう。

「大して質の高くないものを原価割れで大量に売る」というモデル

の中で販売されているからです。だってね。例えば月2万円で支払ってできることで自社の価値を高め、集客に困らない仕組みが、じゃらんネットという枠組みの中でできると思いますか?大手さんが抜群の写真を大量に用意し、広告とかをガンガン打って初めて効果が出ます。つまり、2万円でできる露出は「大して質が高くなく原価割れ」なものなんです。

「自走式」という言葉を覚えておこう

タダで売上を上げるビジネスモデルが一朝一夕でできるわけはありません。私が先述した広告や販促パックに頼らないノウハウもエクスマ塾に通って学んだり、ニュースレターを作れるよう最近ではフォトショップ&イラストレーター講座に通ったりして金銭的な投資をしています。

売れるビジネスモデルとは広告に投資するのではなく、自分に投資することなんだ、ということを実感しています。具体的には塾に通ったり、勉強したりするお金と時間を投資しているということ。

それによって何らかの課金システムに依存することなく、自分がこれをやればお客様は集まる、という自走式モデルを構築する。実は、販促パックやじゃらんネットが悪いのではなく、「これをやれば楽して集客できる」という、経営者自身の他者に対する依存性が一番悪いのです。

自分がやったことが結果につながり、他者の影響に左右されない自走式の売れる仕組みを考えてみてください。

10室以下、特にじゃらんネットからの売上が年間1千万以下の小規模施設の方の場合、販促パックは不要、というのが私の中での結論です。販促パックは参画するだけで売上の上がるものではありません。効果をあげられるだけの時間工数をかけられるかどうかの確認も重要。参画するのであれば、徹底的に活用して売上1千万円以上を目指しましょう。

自走式のビジネスモデルを作るには?
コムサポートオフィス代表
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