私が子どもの頃、近所のおばさんが
「〇〇さんちの□□くんは大学に行きなるんだって!!」
「△△さんって大学出とんなるんだって」
※行きなる→行かれる、出とんなる→出ている、のちょっと敬語的なニュアンスが入っている但馬弁(兵庫県北部地方の方言)
という会話をされるのをよく耳にする事がありました。
昭和40年、50年代はまだまだ田舎では「大学出」の人がいるのは珍しかった時代。
そう言えば、映画「三丁目の夕日」で吉岡秀隆演じる作家の茶川は「大学出のインテリ」って言われてましたね。
おはようございます!普段は民宿&ダイビングショップの親父、コムサポートオフィスのアドバイザーもやっているガク(@kasumi_kadoya)です。
私が懇親会の時に、藻谷啓介さんに直接に質問した事がありました。
懇親会にて激論を交わす!!
(いや、交わしてない、お聞きしてばかりでした)
今回の講演はそもそも「少子化時代における大学の生き残り戦略について」がテーマでした。
その流れで私が質問したかったこと。大学関係者の方がいらっしゃる会場ではできなかったことです(笑)
私が子どもの頃は「大学に行く」というだけで、「すごい!!」と言われました。今は逆に大学に行くのが当たり前。
行っていないことに劣等感を持つ人もいる時代。
今後どんどん出生数に比例して大学の数も減ってくる中、高校を卒業した若者が、大学進学を一者択一で選ぶことが今後も正しいことなのか。また昔の大学進学者が珍しい、という時代に戻ってくるのではないか、という疑問です。
この質問に対する議論はお酒も入っていたこともあり、とても盛り上がりました。
大学に進学しないという選択
お酒の席での話なので、しっかり真意を伝えられるかわかりませんが、まず、藻谷さんが交友されている方のお子さんでも「大学進学しない」という選択が増えてきているそうです。
中には一流大学の入試試験は受け、合格したけど進学しない、という子も。
「大学に行けるだけの学力がある事を確認だけした」とのこと。
あと、最近多いのが大学中退。やりたいことが見つかったら潔く大学を辞めてしまう。
親は高級官僚や一流会社に勤めている家庭のお子さんで、そんな選択をする子が出てきているそうです。
理由は一つ。
「起業」。
藻谷さんも若者に言いたいのは
自分が何をしたいか、したいことに繋がっている学問を選ぶこと。
繋がっていないならば、4年間がもったいない。
繋がる仕事について学んだ方がいい、と。
実際、マザーズ上場ベンチャー企業の社長で多い学歴が「大学中退」であると、言われているのも納得です。
地方では大卒メリットは少ない
そして、藻谷さんが言われてたことで印象深かったのは
仕事柄地方に出向いて色々な人とお話するけど、その人が大卒か高卒か。どこの大学を出ているかを聞いたことはないし、気にしたこともない。
そりゃそうですよね。
地方で何かをする時に、「大卒」や「どこの大学を出ているか」は何の役にも立たないわけです。
何のために大学に行くのか。
良い会社に就職するため。
こう答えていた時代は「大卒」の肩書きや「出身大学」は重要だったかもしれませんが、地方に戻り、自営業を継いだり、起業した場合、大卒や出身大学は、学生時代に得た人脈以外ほとんどメリットを持ちません。
都会で就職することが一般的だった時代と今は変わってきている。また、我々の時代の4年間と今の4年間では世の中の変化スピードが違いすぎます。
チャンスがあれば、その時流に乗った方が良い時代なのです。
進む道がまだわからない若者は?~スイスの場合
18歳の時点で自分のやりたいこと。進みたい方向性がわかっているなんてなかなかありません。ひょっとしたら、日本ではそのことを考える時間を子供たちに与えていないだけなのかもしれません。
個人的には「自分の好き」という感情を優先させるのが大切なのかな、と感じています。
そんな中、面白い話を聞きました。
スイスでは、高校を卒業したら3,4年働いてその後に大学に進学するかどうか決めるよ、と。
そこで自宅に帰ってからスイスの大学進学事情を調べてみました。
すると、色々と面白い事が分かりました。
まず、大学進学率はわずか20%。でも、そこに国際競争力世界2位の秘密が隠されています。
同一年齢層で大学に進学する若者は約20%のスイス。日本が50%を超えたことに比べると、スイスの大学進学率はかなり低い。その理由は、9年間の義務教育終了後、大学進学に向けた普通高校と、学校と実務を兼ね備えた職業訓練とに教育の道が分かれるからだ。
二元制システム ( デュアルシステム ) と呼ばれるこの教育制度の最大の特徴は、高等教育と職業訓練が社会的に同等の価値を持つことだ。職業訓練は左官業やパン屋といった伝統的なものから銀行職やIT分野など多岐に渡っており、職業の種類や経験年数によっては給料も大卒者に負けて劣らない。実際、職業訓練に進む人の割合は同一年齢層の3分の2に上る。
こうしたシステムで大学進学を選択した高校生たちには「マトゥラ/マチュリテ ( Matura/Maturité ) 」と呼ばれる大学入学資格が必要だ。そのためには口頭試験もある高校卒業試験に合格し、論文も執筆しなければならない。つまり、学生はすでに大学入学前から、大学での授業についていける高い知識を持ち、リポート執筆に必要な論理的思考が身についていることを証明しなくてはならない。
本当に勉強のできる(私的にみると勉強の好きな)学生だけが大学に進み、それ以外は職業訓練コースに進む。職業訓練コースと言っても、ブルーカラーとホワイトカラーと言った枠組みではなく、職業を選べば、(日本流に言えば)「大卒じゃないから」といった卑屈な思考は存在しない。
調べれば調べるほどスイスのシステムは合理的で優秀。日本が国際競争力や学力は勿論のこと、観光面においても勝てないのがよくわかります。
小国ならではの弱みを強みに変えています。しかも、それが教育システムから出来上がっているという。
学校卒業後の進路は将来何をやりたいかによって決めなくてはいけません。大学に行く人の割合は全体の1割ほどと少なく、それぞれの職業に見合った職業訓練学校に進む人がほとんどです。
そこでレーレと呼ばれるシステムで3年または4年学び、その後就職するかまたはFachhochschule(ファッハホーホシューレ)という職業専門学校でさらに学びます。
また、全く違う業種に転職したい場合は、新たにその職種の専門学校に入りなおし勉強する人が多いため、学校では様々な年齢の生徒がともに学んでいます。
実際は、働いた後に大学へ行くというよりも、高校卒業後、更に専門性を磨く大学以外の学校があったり、自分の選んだ職業専門学校があわないと思ったら、また別の職業専門学校に入って学びなおす、と言った感じの様です。
この辺はまた、実際にスイスに住んでいる山田桂一郎先生に次回お会いした時により詳しく教えて頂きたいと思います。
このやり方が日本にそのまま導入できるというわけではありませんが、こういったスイスの事例を知るにあたり、大学に進学することが必ずしも正しいとは言えない時代が間もなくやってくるのではないかと感じます。
今後18歳になる若者へはぜひ、自分のやりたいこと、好きを見つけ、それに夢中になれる環境を整えて頂きたいと思います。
若者が帰ってくる環境を整えるという考え方
今回の藻谷さんの講演とは全く関係ありませんが、お隣豊岡市では「わかもの巣立ち応援プロジェクト2018」というプロジェクトを行い、去年に続いてまたポスターを制作しました。
詳しくはこちらを読んで下さい!!↓↓↓
また、今年はこれに合わせて作られた卒業式動画が涙腺崩壊するほど素晴らしいのでこちらでも紹介しておきます。
大学のない地方にとって子供の「大学進学」は若者を都会に”奪われる”ことになります。
実は、この18歳の流出が地方にとっての一番の問題。
都会でそのまま就職して、そのまま帰ってこないケースが多いのです。
そんな巣立った若者たちがまた帰って来られる”場”を作っておくことが私たちの使命。
藻谷さんのデータの見方をすれば、但馬地方も65歳以上の高齢者の伸びは鈍化してきています。
同時に若者の減少も鈍化させられれば・・・
参考に豊岡市ではなく香美町のデータですが、今井ひろこが調べました。
香美町年齢別人口推移
(65歳以上が+2%と鈍化しているが
働き手減少が止まらない)
Uターン、Iターン、推進するのは共に難しい面もありますが、これからの若者の働き方、生き方は変革期に来ている。地方にとって若者減少の流れを変えていくチャンスです。
いずれにせよ、藻谷さんに教えて頂いたこの数字の見方はとても大切。
今後も当たり前の感覚としてこの数字は意識しておきたいと思います。
地方として、考えないといけないことは色々あります。地方における「起業」や「ベンチャー型事業承継」等、そう言った面にもコムサポートオフィスとして何かお手伝いしていけることはないか、考えていきたいと思います。
※昨日、本日のブログは藻谷さん、山田先生の発言と私の考えが文章にした段階でちゃんぽんになっています。また、酒席での会話をまとめたものですので、あくまで考え方の一つとして捉えて下さい。話の大筋は間違っていませんがどの意見を誰が言ったと断言できるほど記憶が明確ではない話である旨は差し引いてお読みいただけましたら幸いです。