「安売りは悪だ!」と気づいた私の失敗談~「海マジ」を強く反対する理由はここにある

マーケティング

昨日のブログ、たくさんのアクセスを頂きました。ありがとうございます。

海マジ反対!!☆「マジ部」はマジ勘弁!地域も業界も安売りで衰退が加速する
価格は最後に言う。だから安さにも価値が宿る。これはお客様にとってもうれしい「安く売る」です。でも、先に「安いよ安いよ」って人を集めても、安さに集まってきた人に後からどんなに価値を伝えようとしても難しい。これは「安売り」なのです。「安く売る」と「安売り」は違います。マジ部のビジネスモデルは「安く売る」じゃなく「安売り」。

SNSでもたくさんのご意見を頂きました。

 

ご意見投稿して下さった皆様。 ありがとうございます。

 

おはようございます!普段は民宿&ダイビングショップの親父、コムサポートオフィスのアドバイザーもやっているガク(@kasumi_kadoya)です。

さて。今日は改めて私が「マジ部」に反対な理由を自分の経験からお話していきたいと思います。

私と同じように後からリバウンドで苦しむ人が出てきてほしくない。

そんな思いを込めて、恥を覚悟で過去の失敗談をお話します。

私にとって悪夢の2010年からの数年間

過去10年で一番辛かった年はいつかと言われると迷わず2010年をあげます。2009年に宿を大幅リニューアル。大きな借金をしましたが、お部屋にトイレもつけ、「これでお客様もたくさんいらっしゃるぞ!」思ったほども売上は上がらない。

唯一希望の光があったのは、ダイビング事業。その前年ダンゴウオを発見し、閑散期であったはずの春先にダイビング事業での収入が大幅にアップしました。

しかし、、、

そのダイビングも事故を起こして実質休業に。唯一順調だったはずの収入も断たれたのです。

当時、月々の返済金は130万円ぐらいだったでしょうか。もう、返せないギリギリのところにいました。

その頃です。”ポンパレ”という格安クーポンサイトが登場したのは。


半額以下販売サイト

今ならば、半額で販売することがいかに間違いであるか。

一晩でも語れます(笑)。

でも、当時は本当に余裕がなかった。

目玉商品(プラン)を出して、宿としての露出が上がる。

そうすれば高単価のプランにも予約が入ってくる。

はじまったばかりの頃はそういった進め方をされていました。

つまりこれは「安売り」ではなく先に「広告投資している」ということだ、と。

2万円のプランを限定40名半額で販売したとしたら値引きは40万円。でも、40万円の収入が入ってくる(実際はここから手数料が更に引かれますが)。

先にクーポンチケットで販売されるので、お金が先に入金されるんですね。資金繰りに厳しいところほどこれは助かります。←ここがポイント。資金繰りに苦しい事業者ほど消費者金融に手を出してしまうかの如く、ここに頼ってしまうのです。

でもこれって、続きませんよね。だって赤字なのですから。こればかりやっていたら、いずれ仕入れすら支払うのが厳しくなります。


これは日帰りプランで出した時のもの
販売価格より仕入れの方が高かった…

結局、日帰りを1回、宿泊プランを2回か3回出して止めました。

これは続けることはできない。

かえってじり貧、問題を少し先送りできるだけで、いつか破たんする。

益々厳しくなる資金繰りを騙し騙しで先送りしていたのが2010年から2011年にかけてのことでしたが、今思えば、2,3回で止めた自分をほめてあげたい感もあります。

あの時、すぐにお金が入ってくるからと、ポンパレを恒常的に続けていたら、多くの常連さんのお客様を失っていた事でしょう。

2011年末にエクスマに出会い、事態が好転

2011年にとあるブログが目に留まりました。

そのブログというのがこちら。

藤村正宏のエクスマブログ
マーケティングコンサルタント藤村正宏さんのブログです。最近の記事は「こんな時代だから、心の質を上げたい(画像あり)」です...

エクスマ藤村正宏先生のアメーバブログです。

その後、2012年にはエクスマセミナーに通いまくり、9月からエクスマ実践塾に入りました。そこから事態が好転し、2013年以降右肩上がりで売上を増やしていくことができ、借金地獄から解放されることが出来ました。

2012年にエクスマを学ぶ中で、藤村先生は何度も「共同購入クーポンサイトはやっちゃいけない」と言われてました。

このブログがわかりやすいかな。

『共同購入クーポンサイトは、おなじみさんを大切にするシナリオではない』
■共同購入クーポンサイトは、おなじみさんを大切にするシナリオではないリピーターを増やすために、新規顧客を死ぬほど大切にし...

グルーポンとかの共同購入クーポンサイトは、
おなじみさんを大切にするシナリオではない。
新規客を集めるシナリオです。
でもそういうことをやっていたら、おなじみさんは逃げていきます。
「なんだよ」って。

(略)

新規客よりも既存顧客を死ぬほど大切にすること。
そうすれば新規客は自然に増えます。
これは確かです。
まずは既存顧客に目を向けて、それから新規客に目を向けていく。
美容室でやってはいけないことがあります。
初回の方のみ50%オフとかいう店がある。
そんなことをしたら2回目は絶対に行きません。
おなじみさんを大事にしない商売が、長続きするわけありません。

この話をされる度、ポンパレに出稿していた自分が恥ずかしかった。

私が講演やセミナーをする際、

「既存顧客を死ぬほど大切にする」

というフレーズをよく使わせて頂くのも、このポンパレに出稿していたという自分の暗黒史の裏返しなのかもしれません。


私の講演は「常連様を大切にする」
という言葉が必ず入っている

私にとって「エクスマを実践する」とは「常連さんをとことん大切にする」ということだったのです。

安売りで一番苦労するのは現場のスタッフ

そもそも安売りをすると一番疲弊するのは誰でしょうか。

利益の減ってしまうオーナーでしょうか。

違います。

対応する現場のスタッフです。

まあ、私たちのような小規模宿泊施設の場合、「オーナー(とその家族)=現場スタッフ」だったりします。

安くで、無料で来たお客様は接客が難しいのです。

なぜか?

全てのお客様がではありませんが、傾向として安くで、あるいは無料でいらしたお客様は

・自分たちが正規料金と同じサービスが受けられるか、懐疑心を持っている

・少しでも得をしようという意識が高い、得しなかったら損だ

のどちらかの思考の強い方が多いです。

特に「懐疑心」については接客を難しくします。自分たちが正規料金のお客様と同様に接客されているかどうかのチェックが厳しくなる。

ちょっとしたミスがあっても

「自分たちは正規の料金を支払ってないからだ」
「正規の料金を支払ってないからいい加減に扱われた」

と思ってしまう。

そんな懐疑心を払しょくさせるために、通常のお客様よりもより丁寧でミスのない接客を心掛けなければなりません。

そもそも、安くできたお客様はあなたのお店・宿をひいき目には見てくれません。むしろ厳しめなのです。なぜなら、あなたのお店が好きだから、気に入ったから来たのではなく、安いから来たのです。お得だから来たのです。

安くないと感じたら。お得だと感じなかったら、「この値段だから仕方ない」「タダだから仕方ない」となりません。「馬鹿にされた」「いい加減なお店(宿)だ」と、一転して敵になってしまうリスクのあるお客様です。

トリップアドバイザーやGoogleに無茶苦茶なクチコミを書かれてしまうかもしれません。

「お友達だから安くした」といったような関係性の深い値引、感謝される値引をしたわけではないのです。

そんなお客様を引き受け、自分も苦労しましたし、スタッフにも必要以上の気苦労をさせたという苦い思い出が「ポンパレ」にはあります。

これは私自身実際ポンパレに出稿し、実体験した正直な感想です。

そんな労力は、常連さんや正規の料金を支払って下さったお客様に使いたいですよね。

安売りは悪だ。

この時痛烈にそう学びました。

一番恐ろしいのは常連さんを失うこと

この手の安売りをすると何が問題になるか。

リピートしないお客様を受け続けることで、これまでいらしていた常連さんが予約を取れなくなります。一見さんの無料客でお店、宿の雰囲気が変わり、その常連さんの足も遠のきます。

つまり、二度と来ない薄利のお客様を日々受けることで、今後安定して適正価格でご利用いただけるお客様を失うのです。

例えば、あなたのお店・宿が大規模レジャー施設、あるいは大型ホテルや旅館だったら全てがそのお客様で埋まることはないので問題ないでしょう。

でも、例えばスタッフ数名でやっているお店だったら。1日に受けられるお客様の数は限られるはずです。その貴重な枠を無料のお客様に使ってしまうことになります。

事業規模が小さければ小さいほど、こういった無料や安売り枠というのは設けてしまうとダメージが大きいはずです。

小規模事業者が絶対に手を出してはならないビジネスモデルです。

補助金が出てその年はお金がもらえても、補助金の切れ目が縁の切れ目です。常連さんを失って、「海マジ」キャンペーンもなくなってしまうという最悪の結果になります。


利益の取れない負のスパイラルに陥る

「マジ部」は「ポンパレ」と構造が同じ

今回、「海マジ」の協賛団体がなぜこんなに広がっているのか。理由は簡単です。国土交通省から補助金が出ているからです。だからと言って無料のお客様を受け入れても全額後からお金が帰ってくるわけではないでしょう。

タダじゃなく、少しはお金が入ってくるからいいか。

それって売上的には値引きしているのと同じことですよね?

つまり、「タダ」ということをフックに集客する=安売り。

付加価値の高いサービスをしていても利益は少ない。

これはポンパレ(クーポン共同購入サイト)と同じ構造なのです。

いえ、ポンパレより立ち悪いです。

だって、ユーザーは年齢限定とはいえ、全くお金を支払わないわけですから。

しかも、ポンパレ全盛期の7年前と比べてスマートフォンが普及し、アプリの使い勝手が進化しています。

これが無料”だけ”利用者を加速して増やしている。

マジ部はアプリ提供しています。


マジ部アプリ(iPhone)

これによって無料を渡り歩けます。

19歳でスキー。20歳でゴルフ、ダイビング、カヌー。21歳で温泉。22歳で釣り。無料アクティビティコンプリート!!(苦笑)。

1年後お金を支払ってお越し下さる人がどれだけいるでしょうか。

このマジ部アプリは、体験からリピーターを生み出すためのものではなく、無料を渡り歩くためのアプリです。

こんなのあったら、次の年お金払ってくるわけないですよね。

何より無料を渡り歩く、なんてことを20歳前後の若者たちにさせて良いのでしょうか。楽しんだらそれに対してお金を支払うという当たり前のことをさせないことを何とも思わないことの方が異常だと思いませんか?

「海マジ」が良くないことは歴史が証明している

マジ部の構造がポンパレと同じであるならば・・・

「海マジ」が良くないことは、歴史が証明しています。

どういうことか?

ポンパレは昨年度4月に休止されましたよね?


ポンパレ休止のお知らせ

休止してもうすぐ1年。何の動きもありません。

実質廃止です。

約7年で終了しました。

このビジネスモデルが良いものであれば、休止になんてならなかったと思います。

「マジ部」は年齢制限を行うことで社会性を持たせたような構造になっているだけです。

ビジネスモデルは同じです。

事業者側のダメージがポンパレほどではないのでこれまで大きな問題にならなかっただけです。

でも、今回の「海マジ」は違います。補助金も出ている。提供する内容に大きく人件費がかかるものばかり。そこを補助金でバックアップして無料を半額のポンパレレベルに姿を変えただけ。

ポンパレの場合はまだとにかくやってみよう、でも良かった。そんな時代でした。でも、そこで学んだんです。安売りは誰も仕合せにしないと。ましてや今は時代も違う。

マジ部」は名前と形を変えただけで、「ポンパレ」と構造や問題点が全く同じなのです。

マジ部」は「ポンパレ」の失敗を教訓に進化したものではありません。

「マジ部」は年齢制限をすることで、「ポンパレ」の劣化版コピーであることをわかりにくくしただけのものなのです。

だって、同じ会社がいつも通り「安売りフック」で仕掛けてきているだけですから。

何でこのことに気づかないのでしょうか。

実際、いかがでしょう。

雪マジをしたおかげでスキー場の経済効果は上がっているでしょうか。入れ込み人数ではありません。無料客を受け入れているわけですから人数は増えて当たり前です。それによってスキー場の運営は良くなっているか、ということです。

お湯マジは?これによって温泉地が活性化したなんて話、宿仲間から一切聞こえてきません。(マジ部アプリがSNS等で拡散し、無料客にばかり手が取られたという悪い話はいくつか聞きました)

無料なんだから実数は増えて当たり前なんです。でも、経済効果なんてないんです。「海マジ」は補助金使って大規模に展開しそうなので尚更たちが悪い。

繰り返します。このビジネスモデルが正しかったらポンパレも休止していないはずなんです。

何か新しい手、行動はしなければなりません。

でも、無料フックは最も安易な行動です。補助金頼みも安易な行動です。安易で努力の見えないやり方がうまくいくわけがありません。こんなの、地域振興でも活性化でもなんでもありません。

むしろ、地域やその事業のブランド力を落としてしまう最悪のやり方です。

少なくとも小規模事業者の皆様は「海マジ」には手を出さないで下さいね。数年後、お客様を失い、きっと痛い目にあいます。

タイトルとURLをコピーしました