この話は急きょ書くことにしました。
書かずにはいられない。
一応私もマリンレジャーの事業者でもあるので。
おはようございます!普段は民宿&ダイビングショップの親父、コムサポートオフィスのアドバイザーもやっているガク(@kasumi_kadoya)です。
「ダイビングショップの親父」というところを太文字にしちゃいました(笑)。
昨日、FacebookやTwitterでもつぶやきました(いや、吠えていたと言った方が良い??!)。
マジ部が”海”にもやってきてしまった!!
そう。これ。
【「海マジ!」とは?】
19歳と20歳を対象に、クルージング、SUP、サーフィンやボディボードなどの体験などが無料になる取り組み。
対象年齢期間中にマリンアクティビティを繰り返し楽しんでもらうことで、将来のリピーター形成に繋げていくとの事。
まあ、私が書く前に言いたいことはお友達の川嶋さんがほとんど言ってくれてますけど。
「海マジ!」に話を戻しますが、特にマリンスポーツは安全の為に絶対人手(人件費)がかかります。
それを無料でさせるなんて、よくもまぁそんな事を思いついたモノです。ダイビングとか事故が起きなければよいですが…。あと「マジ☆部」の情報は、無料コンテンツを渡り歩く若者にSNSで一気に拡散するでしょう。
こうなると普通に有料でマリンアクティビティを利用しに来られたお客様は、無料で群がる「海マジ!」会員によって益々マリンアクティビティ離れが逆に進むんじゃないかな?
そうなんです。私も長い目で見るとこの手の施策はマイナスになると思っています。
特にマリンアクティビティの世界には良くない。
昔、ダイビング業界には悪しき営業スタイルがありました。
「講習0円広告」というものです。(0円が9800円だったり19800円というのもありました)
今はなくなってると思いますが、講習0円の広告で多くの若者をダイビング講習に誘い、そこでステップアップ講習と器材料金あわせて100万円とか200万円とかというローンを組ませる悪徳商法が社会問題になった時がありました。
ダイビングの悪徳商法詳細
(※今はもうこの手口は少ないと思います)
今回の”海マジ”がダイビングに適用されたら。
例えば、体験ダイビングを無料で。しかも19-20歳というまだお金の怖さを知らない世代にこのやり方を復活させる事業者が出てくるかもしれない。
さすがにこのビジネスモデルはグレーゾーン金利問題でそういったローン会社がなくなったので、今の時代には起こりにくいと思いますが、そんな業界のダークな時代の記憶が呼び起されます。
ダイビング本来の価値が損なわれないか。ソフト(講習やサービス)0円、ハード(商品)のぼったくりから、ちゃんとソフト(講習やサービス)でお金を頂く健全な状態に戻りつつある業界を逆行させないか不安です。
まあ、そんな業界のダークサイドから見た側面は置いとくにして、人の命を預かり、指導員の人件費の発生するアクティビティで無料はや安売りは良くないです。
百歩譲って”レンタル器材代無料”ならわかります。雪マジの時はスキー場のリフト代無料でしたし。
スキー場のリフトようにある程度人気(ひとけ)の演出で無料受け入れする層があるのはまだありかも知れません。
ダイビングの場合レンタル器材を無料にしても、それを使うにはダイビング講習を受けてCカードを所有していなければなりません。ダイバーでない人が参加できる体験ダイビングの場合は必ず指導員が必要。その人件費が発生するわけです。
ダイビングに限らず、カヌーでもSUPでもサーフィンでも初心者が器材だけ借りて勝手にできるものではありません。ヨットやジェットスキーは尚更そうですよね。
ここにある業界は全て関係があります
(※UMI協議会)
恐らく構造的には
マリンレジャー参加人数が減っている
↓
補助金を活用して需要を掘り起こしたい
↓
海マジ(19-20歳無料)という安売りフックのプラットフォームを活用することにした
こんな流れだと思います。
まあ、確かに入れ込み数は増えるでしょう。
それが売上に寄与するか。
翌年以降のリピーター育成になるのか。
断言できます。
できません。
入れ込み数だけ増えて効果があった、と補助金活用的には報告されるでしょう。
が、現場レベルでは
「もう二度とこんな安売りやらないで!」
となります。
入れ込み数は増えても疲労感だけが残り、利益はむしろ減少になります。
そして、正規の料金を支払って未来のリピーターになるはずだったお客様に対応できなかった状況を作り出します。
当然、安くできた人たちは翌年以降リピーターにはなりません。
結果、海マジをやった時だけ入れ込み数が伸びますが、翌年リバウンドで一気に減ります。海マジ前よりも減ります。
人口減少時代の今、薄利多売で数やる時代じゃないのです。
情報洪水時代です。どんなに安くして良い体験をしてもらっても、3日後には忘れられる時代なのです。今の時代にやる手法ではありません。
補助金で実際に無料ではなかったとしても、利益として入るのはグルーポンやポンパレで対応した時と同程度かそれ以下になるでしょう。
そう。これは業界や地域を活性化させるものでもなんでもなく、単なる安売りのビジネスモデルに過ぎないのです。
「マジ部」のビジネスモデルの正体
テレビ通販を思い出してみて下さい。
メリットやハッピーを伝えてから最後に今ならこれだけ安くします、とすれば買ってもらえますし、良さを実感してもらえます。
価格は最後に言う。だから安さにも価値が宿る。
これはお客様にとってもうれしい「安く売る」です。
でも、先に「安いよ安いよ」って人を集めても、安さに集まってきた人に後からどんなに価値を伝えようとしてもなかなか伝わりません。
先に安さを強調してからの集客は、価値ではなく安さが好きな人しか集まりませんし、後からどんなに価値を伝えても「所詮は安くで売ることも可能な商品・サービス」としてしか受け取られません。
これは「安売り」なのです。
「安く売る」と「安売り」は違います。
「安く売る」はお客様に感謝されますが、「安売り」は感謝されません。
「安く売る」で来たお客様はリピートしますが「安売り」で来たお客様は二度ときません。
何より真っ当な金額でやっている事業者のビジネスを妨害し、業界や地域のブランドも「安売り」によって落としてしまいます。
これまで雑誌じゃらんやポンパレをはじめとするリクルートの安売り手法を見て来ましたし、実際にやって痛い目にあってきたので、さすがにもう騙されません。
その時は瞬間的に利益のない売上が上がりますが、キャンペーンがなくなったら終了です。特に今回、補助金があるということは、逆をいえば補助金が終わったらこのキャンペーンも終わりになってしまうのです。
この後のリバウンド。怖いですよ~
利益を出して荒稼ぎした後のリバウンドではなく、利益も出ずに忙しい思いをした次の年にお客様がキャンペーンする前よりも更に減少してしまうのです。
マジ部のビジネスモデルの問題点と、補助金事業の問題点をダブルでくらうことになります。
マジ部のビジネスモデルは「安く売る」じゃなく「安売り」です!!
マリンレジャー業界の皆様へ
マリンレジャーを指導する立場の皆様。
よーく考えてみて下さい。
私たちは自然の素晴らしさと危険性を熟知するためにたくさんの時間とお金を投資して今があります。どのアクティビティにおいてもお客様の命をお預かりし、決して安売りなんてできないビジネスのはずです。
今、時代は人口減少社会。
景気に関係なく、どのレジャーだってアクティブ人口が減っているのは当たり前なのです。
こういった時代はどうしていけばよいのか。
それぞれのアクティビティの価値をしっかりお伝えし、しっかりとしたおもてなしで喜んでいただく。
人数だけを追いかけないで、多利少売のビジネスモデルにしなければならない時代です。
人数を増やすのではなく、満足度を高める努力をしなければならない時代です。
私たちのビジネスはお客様に日常では経験できない幸せな体験をしていただけるアクティビティです。
私のお店は「親子体験ダイビング」に特化し、
宿泊とセットで販売することで値段競争に
巻き込まれない仕組みにできました
無料をフックにするのは時代への逆行です。補助金で補てんされたとしても、補助金の切れ目が縁の切れ目になるだけです。
甘い誘いには落とし穴があります。
数年後、それが良い結果を生むものなのかどうか。よーく考えてみて下さいね。