素晴らしい資源や儲かっている商材があるのに人口減少が加速している町の話~リアル「観光立国の正体」

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観光立国の正体は今回の講師である藻谷浩介さんと山田桂一郎先生の共著です。

後半第5章以降がお二人の対談になっています。今回、藻谷さんの講義の後、お二人の公開対談が実現しました。


リアル「観光立国の正体」が実現!!

昨日もお話ししましたが、もうね。文字起こししてもほとんど公にできない。ましてや実名表記したら炎上します(笑)。

実際、観光立国の正体も校正チェックでかなり削ったり、実名を匿名に変えた部分があるそうです。

今回のお話の中で最も衝撃的だったのが儲かっているのに人口が減っていっている市町の現状。そのまち、ものすごーく儲かっているのに、もうすぐ廃村になるかもしれないという勢いで人口が減っていっているそうです。

 

おはようございます!普段は民宿&ダイビングショップの親父、コムサポートオフィスのアドバイザーもやっているガク(@kasumi_kadoya)です。

対談の中では具体的な市町村名が出ていました。


モザイクの部分です

どこの市町のお話かは公開できませんが、どんな状態になっているかはお話しできます。今日のブログは場所を山陰のある漁師町、その地域の利益を生み出す食材が「カニ」ということにしてフィクションのお話を作ってみました。あくまでフィクションです。山陰地方に該当する市町村はありませんのでご注意下さい。

ある日本海側にあるカニのまちの話(フィクション)

山陰海岸に「北蟹町」という人口1万人の漁師町がありました。この町では昔からカニ漁が盛ん。しかし、カニというのは鮮度が重要。水揚げされてから生け簀に入れてもすぐに死んでしまいます。それをこの蟹町の漁師さんが、生け簀に入れてもしばらく死なない特別な技術を開発しました。


あくまで「カニ」の話はフィクションです

この技術。北蟹町の漁師が漁場まで日帰りで行けること。その地の海洋深層水を利用していることから他の市町では真似ができません。

北蟹町オリジナルの技術。これにより、蟹町では年収3千万円の漁師さんが続出し、カニをメインにした水産加工屋さんもとても裕福です。

田舎の町ですが、ベンツやレクサス等、高級車に乗っている人がたくさんいます。

休漁期には長期で海外旅行に行く人も。漁場において半養殖で資源が枯渇しない仕組みを確立したので、この収入は一生保障されたようなものです。

が、驚くことにこの1万人というこの町の人口。5年前は1万5千人の人口。。。減少が急激に進んでいるのです。更に5年後には7千人以下、10年後には5千人以下、20年後には廃村になっているのでは、と危惧されています。

儲かっているのに何で人口減少が止まらない?

まちとして儲かるためのキラーコンテンツがあるのになぜ人口減少が止まらないのでしょうか。一番の原因は水揚げされたカニの販売先。ほとんどが町外、県外へと売られており、地元の飲食店や宿泊施設が仕入れられない状況になっています。

その為、まち全体としてみると一部の漁師さんと(水産加工屋も兼ねている)仲買人さんが儲かっているだけで、儲けた彼らはそのお金を旅行や車等、町外で使いまくります。

それだけではありません。漁師町としての風情、景観のある町並みでしたが、都会のハウスメーカーに豪邸を発注、地域景観とは全く異なるツーバイフォーの住宅がポツポツと登場し始めました。

「観光」として有益な食材と美しい景観が売りにできなくなってきています。

そして極めつけは自分たちの子供を都会の有名私立中学や高校に進学させていること。もちろん、そこに「将来家業を継がせる」という選択肢はありません。

年収3千万円の職業を継がせるよりも堅実な職業、公務員になってくれることを望むのです。

従業員も同様。水産加工には多くの人手がかかります。しかも、カニの身むきは機械ではできず、全て人手でないとできません。地元の方を高給で雇えばよいのですが、低賃金で雇える外国人を中心に雇用します。

つまり、「地域内経済循環」が全くないのです。「カニ」というキラーコンテンツで稼いだお金が全て町外に流出し、直接かかわっている事業者以外に恩恵が行きません。

すると、どうなるか。

食べていけない事業者はどんどん廃業していきます。あるいは、都会に出た子供たちが帰ってきません。年老いた今の世代がいなくなると空き家になります。


所得は上がっていくのに人口は減り続ける

既に空き家や独居老人がどんどん増え始めてきています。学校も10年前、100人だった全校生徒が5年前60人に。現在30人にまで激減しました。5年以内に統廃合される方向へと進んでいます。病院も町内で受診できない診療科が出始めてきています。特に小児科の先生が見つからなくなり、若い夫婦が子供を安心して産める町ではなくなってしまいました。儲かる産業があるのに人口減少に歯止めがかからなくなってしまっているのです。

儲かる事業があってもなぜその町はダメになるのか

さて、、、

以上はあくまでフィクションです。今回の対談で聞いた問題のある自治体で起こっている事象を複数組み合わせて私が創作したフィクションです。架空の町での話ですが、部分部分は日本のどこかで本当に起こっています。

ではこのフィクションのまち。10年後、20年後に存在しているでしょうか。この儲かっている事業は存続しているでしょうか。存続させるとすれば、どうすればよいでしょうか。そもそも、人口減少が加速している原因は何でしょうか。

年収3千万円得られる商売が存在している。にもかかわらず、子どもには公務員を目指させる。公務員ってそんなに良い職業でしょうか。


都会で会社員や公務員がいいの?

確かにこれまでは安定感ナンバー1の職業でした。が、まもなく稼げない自治体はボーナスや退職金がカットされます。何より人口が減れば、公務員の数自体を減らさなければなりません。地方自治体の公務員になるのは決して明るい未来とは言えない、というのがお二人の意見でした。では国家公務員ならばよいのか?こちらも決して明るくはないとのことでした。

なぜ、こんなにおいしい商売を子供達にさせないのでしょう。

なぜ、地域の人たちを高賃金で雇うという発想にならないのでしょう。

まちの未来をよくしようという努力はないのでしょうか。

もっと、間接的に儲かる人も増やすために地域内経済循環を意識すればよい。

これができない理由。

これを聞いて衝撃的でした。

職業に対する先入観が地域を滅ぼす

理由は色々あります。そんな中、今回の対談の中で特に印象的だったのは田舎の人たちの”職業”に対する偏見、固定観念です。例えば、自分の子供に商売を継がせない、地域の人を高単価で雇おうとしないというのには、職業に対する変な偏見や先入観があるからのようです。

例えば、子どもたちに対して。自分がたくさん儲けたお金でいい学校、大学へ行かせたい。安定した、あるいは人様にかっこいいと思われるような名の知れた会社に勤めてほしい。

今や公務員や上場企業に勤めていても安定した職業、誇れる職業とは言えなくなってきています。

従業員の賃金を上げない理由は?「この仕事はこれぐらいの賃金のもの」という先入観がある。周囲にいなければ外国人労働者を雇えばいい。それでも人手不足になればこの商売は止めてしまえばよい。自分の代で終わろう。。。

今の時代、ロボットにどんどん変っていきます。ホワイトカラーの職業もAIにとって変わるかもしれません。水産加工業の中でも、もしもカニの身とりがロボットではできない。人手でしかできない作業であれば。実はものすごーく単価を上げるべき仕事なのかもしれません。


人の手でする仕事には価値がある

職業に対する昔の基準で賃金は決められません。「人の手にしかできない作業」は価値になります。であれば、そこに高い報酬を与える賃金体系に変えていかなければなりません。その地域を支える収益性の高い事業に携わっている人たちにはこれまでの慣習で決まっていた平均賃金よりも高単価を保証してあげることで、地元の人に儲けを還元する仕組みを作らなければならないのです。

地域内経済循環こそが目指すべきゴール

観光立国の正体の240ページにこんな文章があります。

佐世保バーガーを仕掛けた優秀な女子職員が結婚を機に退職して東京へ引っ越してしまったことで、ツーリズムの盛り上がりが一気にしぼんでしまったという話です。

スイスであれば、そこで地元に残るのが当然なわけなんだけど、日本では優秀な人ほど東京に一度は行かないと納得しない。でも恐らく東京に出てみると、人間関係のややこしさは少ないけれど自分の存在もどんどん希薄になってしまうというシカケに気付くはずなのです。ぜひ彼女にもいずれ戻ってきてほしい。

そうなんです。田舎はあらゆる物事において今の流れを変えようとすることに対して反発が起こります。新しい町おこし、新しい経済循環を起こそうとしても消極的だったり、時には批判的だったりするものです。

それがわかっている人ほど儲けたお金を町外でプールしようとしてしまう。高級車を購入したり、都市部にマンションを購入したりしてしまうわけです。

今、都会にマンションを購入するのがいかにリスクの高いことかというお話もありました。


全国の空き家が問題になっています
”空き家率”でみて
田舎の空き家が問題になっていますが…


空き家数が多いのは大都市圏なのです
あまりまくっているのですから
価値は高まらないし、資産価値も期待できません

働くのは田舎で住むのは都会。私も若い頃はそれが成功者のパターンのように感じていたことがあります。でも、これからは自分が稼いでいる地域において地域内経済循環をしっかり起こさせた地域が生き残ります。

国が今、補助金をじゃぶじゃぶ投入しているのは与えられた補助金で今のうちに人口減少をゆるやかにさせる努力をしてほしいから。地域内経済循環を起こしてほしいから。それを実現しやすいのが「観光」なわけなのです。

「観光」こそが人手を最も必要とし、1次産業、2次産業にも影響を与える地域内経済循環を起こしやすいのですから。

素晴らしい資源や儲かっている商材があれば、それを「観光」に活用し、地域内経済循環を起こして地域振興へと結びつける。

お二人の対談を聞いていて私が得た解釈は以上の通りです。


リアル「観光立国の正体」対談面白かった~

また、明日からは「観光ガイド論」も踏まえた全体のお話に戻りますね。

 

コムサポートオフィス代表
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