昨日もお話した通り、「値上げしよう」というタイトルでセミナーを募集をしていたのはまずかったな、と反省しています。
昨日のブログでは、聴講されたい方が参加表明しづらいタイトルだから、というお話をしましたが、実はもう一つあります。
説明をすれば問題ないことですが、タイトルだけからだと「お客様からたくさんのお金を頂くためには?」→「お客様からたくさんのお金を奪うには?」→「自分がより多くお金儲けをするためには」→「お客様に対して愛のない言葉」とも一見受け止められてしまう言葉にもなってしまう可能性があるからです。
おはようございます!普段は民宿&ダイビングショップの親父、コムサポートオフィスのアドバイザーもやっているガク(@kasumi_kadoya)です。
ビジネスは誰かを幸せにするためのもの。自分が提供したモノやサービスが誰かを幸せにしていることが絶対条件。
でも、資本主義社会に飲み込まれていくうちにそのことを忘れてしまった。本来日本人の商い感は三方よし、自分も相手も世間も幸せになることを意識していたはずです。
その為には言っちゃいけない言葉ってあると思うんですね。
一番言ってはいけないのは「相手の立場や気持ちを考慮しない言葉」です。
今日のブログは、あるネットインタービューにおいて、それを無茶苦茶感じてしまった、というお話です。
トラベルボイス「ブッキングドットコム」 インタービュー記事より
それが、ブッキングドットコムという外資系予約サイトの東日本地区統括部長ドナ・モリス氏へのインタビュー記事です。
ブッキング・ドットコムの宿泊施設の拡大戦略とは?
サポート体制からキャンセル無料の考え方まで聞いてきた(PR)
私がショックを受けた内容は以下の部分。
ブッキング・ドットコムがユーザーに提供する大きなメリットは「宿泊当日のキャンセル無料」の設定だ。ユーザーにとって予約しやすい制度である一方、施設にとっては、当日キャンセルやノーショーは痛手になる。ブッキング・ドットコムとしては、これをどうみているのか?
モリス氏は、「ユーザー第一を掲げるブッキング・ドットコムとして、ユーザーにフレキシビリティを提供するのが目的」と理由を説明した上で、次のように状況を語った。
「一定のキャンセルがあるのは認識しているが、需要の引上げと柔軟性のバランスだと思う。キャンセルが発生しても、ブッキング・ドットコムに掲載することで予約が増え、収益が高まったというフィードバックも参入施設からもらっており、パートナーのビジネスを十分にサポートできると考えている」。
キャンセルのリスクを超えたメリット、集客ができるという考え方だ。
(以下略)
ザックリ言ってしまうと
確かにキャンセルが生じるけど、損した分たくさん集客してあげるのだから少しぐらいキャンセルされたって別に良いでしょ?
と、いうことです。
いやいやいや。
ちょっと待って下さい。
私たちは宿泊するROOMやBEDを機械的に売っているわけではないのですよ・・・。
お客様が来ないかもしれないという発想はない
まず、おそらく日本人宿泊施設経営者であればほとんどの人が持っている感覚です。
予約したお客様は必ずいらっしゃる。
当日来られないというのは、事故やトラブルに巻き込まれた時のみ。
「ヤッパリいくのやーめた」で当日安直に変更される文化はない。
確かにこの辺は夕食付で販売していることの多い日本の宿泊施設のシステムが世界的にみれば特殊だから、というのもあります。
でも、奇しくもこの記事の中で
モリス氏は、どのカテゴリの施設においても「ビジネスの観点で日本が大きく異なるのは“伝統的”であること」と話す。“伝統的”とは、目で見える文化に留まらず、お客様に質の高いサービスを提供するために最大限の努力をしようとする姿勢そのもの。「海外とは違うレベルにあり、感銘を受けている」と評する。
そして「外国人旅行者は、そんな“伝統的”な面を魅力に感じ、日本の宿泊施設を利用する方もいる」と見る。
と述べています。
この日本の宿泊施設の質の高いサービスを提供しようとする姿勢は、まさにこの「お客様は必ずいらっしゃる」という前提条件、急にキャンセルしたりしないという性善説の上に成り立っているのです。
日本人は完璧主義で親切である反面、打たれ弱い
これは、日本人のメリットでもありデメリットでもあるのですが、モノにもサービスにも「完璧」を求めます。しかも、その場の適応力ではなく「準備」に対して完璧を求める傾向が強い。
時には「ミスは許されない」という緊張感を持ってお仕事をされている方も。これがメリットである反面、100のクチコミ・お客様の声のうち99絶賛の評価をいただいても、たった1つの批判的な評価に気持ちを奪われてしまう事業者が多いです。
融通が利かないけど一生懸命。私はこれが日本人の美徳でもあると思っています。
なので、お部屋を整えて、料理を用意して、お風呂をためて、人手を確保して・・・それでお客様がいらっしゃらなかった時、間際にやっぱり行かないって言われた時のショック!!
確かに100組中1組当日いらっしゃらなかったぐらいで金銭的な損失は全体的にみれば大したものではないかもしれません。でも、いらっしゃらない、特にその連絡もなかった場合、それを待ち続ける精神的苦痛は「それ以上集客で貢献するから」で割り切れない人の方が多いのが日本人的な感覚かと思います。
なので、集客がキャンセルのデメリットを越えたメリットになっているから、と割り切れる事業者は日本人経営者には少ないのではないかと思うのです。
特に私の周辺の民宿・ペンションのオーナー、女将さんをみても、事業規模が小さくなるほどメンタルが弱いです・・。
時代はオンライン決済(事前決済)になってきている
実は、インターネット予約にはデメリットもあります。見ず知らずのお客様と宿が予約契約を結ぶため、人としての感情が希薄になります。
そのためにどんなことが起こるか。私の宿も過去に何度か経験ありますが、繁忙期の週末を全て予約されるお客様があります。例えば、12月の土曜日全てをとりあえず予約。あるいは、年末年始を3泊予約。もちろん、間際になって行かない日以外は全てキャンセルすること前提です。ただ、私の経験でいうと、この予約をされるお客様は最終的には全ての日をキャンセルし、結局来られないということが多いです。
あるいは、外国人による日本語予約サイトからの予約。元々外国人からの予約は当日キャンセル、あるいは予約していてもいらっしゃらないということが多いです。その為、外国人向け予約サイトはオンライン決済でしか予約を受け付けなくしているお宿さんが多いです。アゴダやエクスペディアはオンライン決済のみです。また、楽天トラベルも外国人向けサイトはオンライン決済のみに私は設定しています。
すると、ここ数年外国人による日本語予約サイトからの予約が増えてきているのです。日本語の予約サイトはオンライン決済予約ではなく、現地払いの予約が選べることを知られてきていて、日本語サイトからの予約の仕方を説明しているサイトなども海外では登場しているそうです。
こうなってくると、性善説を元に現地決済にしている日本語サイトも今度オンライン決済化していく必要性が出てきます。
時代はオンライン決済を導入し、不泊対策の流れになってきています。予約していても来ない人がいること前提で多めの予約を取る、というのは小さな宿泊施設ほど難しいですし、日本をそれで当たり前の社会にしてほしくないです。
「愛」のないビジネスはうまくいかない
冒頭の話に戻ります。
本来日本人の商い感は三方よし、自分も相手も世間も幸せになることを意識していたはずです。誰かの犠牲のもと、ストレスのもとに得をするビジネスモデルは存在しません。
確かに自由に当日キャンセルできる仕組みはユーザーにとってはありがたいかもしれません。予約サイト運営者も出し入れが頻繁になるほど儲かります。
でも、当日にキャンセルして平気な心のない社会を前提条件に作られる、準備している宿泊施設を犠牲の上に成り立っている「愛」のないビジネスモデルです。
まさに、お金のために何かを犠牲にする典型的な崩壊しかかっているこれまでの資本主義モデルです。今後は持続可能なお互いにも社会にとってもハッピーな資本主義モデルとしなければなりません。
それが今、エクスマを学ぶことで理解しようとしている関係性資本主義、「つながりの経済」がそうです。
当日キャンセルしてもいいやって感じで予約するお客様を増やすような商売を私はしたくありません。
なので、こういった発言をされる責任者のいる会社とは一緒に仕事をしたくはありません。うちのような小さな民宿がそんなこと言っても何の影響力もありませんが、私の宿は「ブッキングドットコム」には登録しません。こういった”姿勢”の予約サイトからは自分が予約をする立場としても予約はしたくない。
この記事を読んで、私はそういった残念な気持ちがこみあげました。
コムサポートオフィス代表
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