文春オンラインのPayPayに関する記事が話題になっています。
ついに訪れた「PayPay手数料有料化」の激震!ローカルスーパー&コンビニの2つのサバイバル戦略 #キャッシュレス #PayPay #文春オンラインhttps://t.co/vu1V7mPFze
— 文春オンライン (@bunshun_online) May 11, 2021
PayPayの手数料有料化による懸念は以前より当ブログやコムサポートオフィスYouTubeチャンネルで指摘させていただいていました。
日本でキャッシュレスが進まないのは手数料が高いからだ!!
果たして本当にそれだけの理由でしょうか。
今日は、日本でキャッシュレスが進まない本当の理由について、さらに深掘りしてお話ししていきます。
こんにちは!普段は民宿の経営者兼看板親父♪
コムサポートオフィス副代表のガク(@kasumi_gaku)です!
確かに世界的に見ても日本のキャッシュレス手数料は高すぎる。クレジットカード手数料ですら1%以下の国がある中、日本は一昔前は5%以上、今でも3%以上が標準です。
元々QRコード決済はハードのコストがかからない分普及が進み、手数料も抑えられるという期待がありました。私自身、QRコード決済の誕生を歓迎したのは、クレジットカードの手数料相場が3〜4%なのに対し、QRカード決済はその半分、2%以下になることを期待したからです。
万が一QRコード決済でも3%以上の手数料が徴収されるのであれば、結局キャッシュレス推進とは名ばかりの中間搾取事業者を増やし、優遇しただけになってしまいます。
とは言え、キャッシュレス導入に関して事業者の立場から冷静に判断した場合、多少の手数料を支払っても導入すべき利点もあります。売上のペーパーレス化のメリットもありますし、何よりも
キャッシュレスが利用できることは広告費として計上してもよいぐらいの価値がある
からです。
キャッシュレスで選ばれる、現金オンリーで選ばれない
自社が高くても選ばれる明確な理由があるならば、現金のみ取引でも問題はありません。しかし、一円でも安くしないと同業他社に勝てない状況で競っている状況の場合、ライバルが現金のみ商売ならばこちらがカード支払い可能とするだけで、多少価格が高くても選ばれやすくなります。特に型番商品の取り扱いでない飲食店や宿泊施設はそうです。
例えば、宿泊施設の場合施設詳細内に以下のような掲載項目があります。
また、全てのビジネスにおいて、Googleマイビジネスでもカードの取り扱い可不可の表示がされています。
飲食店の場合、食べログにおいてクレジットカード利用の可不可で検索の絞り込みができてしまいます。
「カードが使える」「キャッシュレス対応」であることが、検索時の表示数を増やしますし、比較して同程度のお店ならば、1円でも安い方でなく、カードが使える方が選ばれます。
キャッシュレス可能を表示することは、それだけで宣伝広告費としての価値があると言えます。
とは言っても、それでも現金にこだわるお店や宿が多いのは何故でしょうか。
例えば、地元豊岡市の飲食店でカードの使えるところと使えないところを比較すると以下の結果が出ました。
飲食店190軒のうちカード利用可能店舗は48軒、使えないお店は使えるお店の未だ3倍近くあります。
一昨年、国があれだけ頑張ってキャッシュレスを推進したにもかかわらず、現状はこのような実態です。勿論、カードは不可だがQRコード決済は導入した、というお店も何店舗かはあるでしょう。しかし、Rettyでの「PayPayの使えるお店検索」をしたところ190軒中53軒ということでカードと同じような数値結果でした。
「PayPayの使えるお店」検索でも
カード利用可能店舗軒数と大差なし
キャッシュレスが使えるが、使えるという登録をしていないお店もあるかもしれませんが、地方ではまだまだキャッシュレス化が進んでいない実態があります。
国が推進しても大手チェーン店以外は相変わらず現金主義。キャッシュレスが進んでいない理由は手数料が高い問題だけではない、と私は考えています。
キャッシュレスが進まない手数料以外の理由
では、「手数料が高いから」以外のキャッシュレスが進まない理由は何か?実は導入にブロックをかける細かい理由が多数あります。私が思い付いただけでも5つありました。順に説明していきますね。
(1)エラーが出た時の対処が嫌。お客様が現金を持っていなかったら?
機械操作にエラー表示はつきものです。事業者自身が機械操作に慣れていないから、お客様のカード履歴に問題がありストップしているから、あるいは通信の不具合、停電などなど。
万一、決済が完了しなかった場合どうすれば良いか?その際、お客様が現金を持っていなかったらどのように対処すれば良いか。年配のオーナーさんほど、機械音痴、パソコンアレルギーの方はいらっしゃいます。また、そもそも新しいシステムを覚えるのが嫌、面倒くさいという場合も。
自分が従業員として働いている場合は覚えるしかありません。しかし、個人経営であったとしても、自分が社長になれば自分で決められます。新しい仕組みを導入するのが嫌、覚えるのが面倒くさいオーナーさんも少なからずいらっしゃるのが現実です。
手続きを覚えるのが嫌なのは勿論、万一のトラブルの対応のことを考えると、トラブルが起きない現金が一番、という思考に落ち着いてしまいます。
(2)入金になる(現金が入ってくる)のは最長2ヶ月後?
最近主流のスマートフォン利用によるカード端末は月2回締め日がある、数日後に入金処理が完了する、なんてところもあります。しかしひと昔前、銀行から斡旋してもらってカード端末を導入していた時代は、末締めの末締めの翌末払い、入金されるのが最長2ヶ月後なんて時もありました。手数料以上に深刻なのがキャッシュフローの問題。BtoCの事業者さんがお客様に対してキャッシュレスを推進しても、BtoBで自分が仕入れを行う際は現金取引、特に未だ銀行振込ではなく、営業マンが現金回収されているケースもあります。
手元に持っている現金に余裕があるか。ない場合ほどキャッシュレスを導入するのを躊躇ってしまいがちです。これは私も事業者としてとてもよくわかります。
(3)お客様はカードが使えなければ、現金で払ってくれる人ばかりという思い込み
うちは、カードを導入していないから現金特価でやっている。そのことはお客様は理解してくれているはず、という考え方。
この考え方が正しい、間違っているという話ではなく、こう考える事業者さんも一定数いらっしゃるだろうな、ということで。私自身は先述の通り、一円でも安くするよりも、キャッシュレスの利便性をPRした方が、広告費換算で結果お得になる考えています。
20年ほど前、まだ私が私が家業を継いだばかりの頃、地元同業者の先輩に
カードは使えても公にはせず、お客様に聞かれない限りできることを極力隠しておいた方が良いよ。
と、アドバイスいただいたことがあります。カード支払させろとごねるお客様にだけ、渋々カードを使ったらOK、なんて考え方もあるのかな、と当時は違和感を感じました。
今はそんな時代ではないのでしょうが、未だその頃の考え方を維持している年配事業者さんもあろうかと思います。
自分の周りは現金払いの人ばかりだ!
との認識があるのかもしれませんが、キャッシュレス対応していないので、現金を持ち歩かない顧客は離れていってしまいます。なので、顧客減少に気がつかず、仮に売上が減ってもそれは「景気のせい」であって、「キャッシュレス未導入による顧客離れ」であることに気づいていないかもしれません。
(4)お客様は現金特価にしてでも1円でも安くした方が喜ぶという思い込み
お客様は1円でも安くした方が喜んでくれる。
建前はそう言っていても、実際は違うんですね。
お客様は安い方を選ぶに決まっているので、1円でも安くできる現金支払いしか対応できない
というのが、現金にこだわるオーナーさんの本音だったりします。これは価格競争に巻き込まれてしまっている人の残念な思考です。
お客様は選ぶ理由がないから安い方を選ぶわけで。選ばれる理由づくりを放棄しているから、価格で勝負しなければならず、そうなるとカード手数料の発生するキャッシュレスでは近隣同業者、特に大手さんと勝負できなくなる、という悪循環にはまってしまっているわけです。
(5)将来手数料が一方的に値上げされないか不安
今は3%でも、消費税のように3%→5%→10%と手数料が上がっていくのではないかと不安がある。カード決済に対してQRコード決済したことで、カード決済も引っ張られて安くなることが期待されました。しかし、残念ながらそういった流れは現時点で起こっていません。
キャッシュレスを推進するが、手数料は下がらない。このことを認識してしまっている人が多ければ多いほど、安易にキャッシュレスを導入することに抵抗を感じるオーナーさんはあるのではないかと感じています。
ちなみに、
お客様の情報を盗まれるからキャッシュレスは反対!
と言っている方もいる、なんて話も聞くことはありますが、それは導入しない理由の後付けなんじゃないかと個人的には思っています。そう言ったデータ管理の意識の高い人ならば、個人情報がうるさく言われる前にキャッシュレスやPOSシステム、デジタルでの会計管理を導入していたはずですから。
(番外編)脱税できなくなる
これはまあ、番外編ということで(笑)。私の宿も今や売上の8割以上がキャッシュレスです。これは現金出納の管理がすごく楽になった反面、現金支払いの際、手持ちがなくて不便だったりします。最近は自腹で立て替え、会社の口座から自分の口座に返金してもらう、なんてケースも出てきています。
まあ、透明性が高いわけなのですが、グレーゾーンのお金を作りたいオーナーさんにとっては売上の隠しようがないです。お店が儲かっているのに頑なに現金にこだわる方は
・強気の現金商売でもお客様が減らない自信がある
・カード手数料というお金の移動だけに搾取されるのがものすごく嫌い(でも、この考え方の人ほど、自分が旅行に出た時はカード払い中心だったりする)
・そもそもキャッシュレスというデジタル取引を信用していない
といった傾向のある方なのかな、と感じます。
ただ、国がキャッシュレス導入で税金徴収の透明性をあげようとするのは、「隠し所得、裏帳簿を作れなくなるから」という理由でキャッシュレスを拒んでいる人が一定数いると捉えている現状もあるのだと思います。
また、個人商店ほど現金に執着する。大手チェーン店ほど現場での現金管理をなくし、入金の数字管理だけをパート・アルバイト任せにできるメリットがあります。中小ほど現金に固執し、大手ほどキャッシュレスに移行している背景もあります。
以上、様々な要因が少しずつ加わって結局キャッシュレスを導入しない、という判断を下すオーナーさんが、抽象零細企業においてほど、今でも一定数いるのだと思います。
多数の理由を説明できないために、「手数料が高いから」という言葉ひと言だけを使って片付けている場合もあるかもしれません。きちんと見ていくとキャッシュレスが進まない理由は多数あり、複雑に絡み合っていることがお分かりいただけると思います。
キャッシュレス化することで、デジタル化は加速されるのですが・・・
日本のキャッシュレス化はまだまだ先になりそうに感じています。
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