先日開催した山田桂一郎先生の講演会。
30人ものアンケートをいただきましたが、大変好評でした。ただ、「内容が難しかった」「理解できないところがあった」という意見もうかがいました。
桂一郎先生フリークの我々夫婦は一つ一つのお話に大きくうなづいて聞いていたのですが、これまでなんどもお話を聞き、内容を咀嚼できているからなのかもしれません。
初めて聞いた人が難解と感じる、あるいはわからない部分はどの辺なんだろうかと改めて考えてみました。
するとふと、ベースとなる考え方が書かれている1冊の本を思い起こし、この内容を理解している、知っているか否かが大きなポイントになるのではないかという考え方に至りました。
今日はそんな本の紹介です。
おはようございます!普段は民宿の経営者兼看板親父♪
コムサポートオフィス副代表のガク(@kasumi_kadoya)です!
藻谷浩介著「デフレの正体」を読んだことがありますか?
その本とは藻谷浩介著「デフレの正体」です。2010年6月に発売された書籍。もう9年前になります。当時は「何言っているんだ?」と批判の多かった本。でも、今読めば当たり前のことが書かれています。
9年前に景気反動は人口変化によるものだと断言していたのはすごいことだと思いませんか?
簡単にいうと
景気は「人口の波」によって動く。どんなに生産性を上げても生産年齢人口が減少していく社会で景気がよくなる事はない。
ということを2010年の時点で指摘しています。
例えば、平成時代の30年間に好景気はあったのでしょうか?貿易黒字によって好景気な時期はありました。でも、国民がそれを実感していなかった。理由は、景気が良くなり、日本全体が儲かっていても、小売販売額は1998年頃がピークで、毎年減少し続けいたのです。内需は減少していたんですね。
いわゆる「実感なき好景気」と呼ばれるもので、儲かっていても消費の循環に向かっていない、モノが売れないから我々一般庶民は好景気の実感がなかったわけです。
なぜ、内需が減少していたのか。生産年齢人口、いわゆるお金を使う世代が減少しているからです。
若者の車離れ。これは若者が減少しているから。出版不況。インターネットの影響とされていますが、インターネット登場以前から出版業界の売上は下がっていました。(もちろん、インターネットによって不況をさらに加速させたのは事実です)つまり、人口減少(厳密には生産年齢人口減少)が内需を減少させていたのです。
この本は平成から令和に変わる今だからこそ、ぜひ多くの方にご一読いただきたい本です。
なぜ、多くの方が山田桂一郎先生のお話を すぐに理解できないのか?
山田桂一郎先生と藻谷浩介先生は盟友であり、一緒に会社も設立されていますし、講演会などの統計データも共有されています。
デフレの正体を読んでいれば、
・景気が悪いと感じているのは、生産年齢人口減少が原因である。
・GDPが増えても国内消費が増えなければ景気の実感はない。
・地方が都市部よりも景気が悪いと感じるのは、地方の方が先に生産年齢人口の減少が起こっているからである。
ということがわかります。
このことが織り込み済みな状態で話を聞くのと聞かないのとでは桂一郎先生の話の入り方が変わってきます。
今、日本の現状がどうなっているか。なぜ景気が悪いのか。数字で把握していること。その数字を認識せずに感覚的にまた景気が良くなることだけを期待する。実感としての景気の波を良くするには、今の動きのままだと、人口減少の影響を無視できません。
多くの人が今と同じ考え方、やり方で景気が戻ることを期待します。でも・・・人口減少時代に同じやり方では無理なのです。
戦後日本は皆が頑張ったから経済成長した。
違います。
残念ながら人口ボーナスにすぎませんでした。人口が爆発的に増えたから経済成長したのです。同じやり方で経済成長しようとするから非正規雇用が増え、企業が儲かっても、一般庶民が儲からない、好景気実感のない世の中が続いてしまうのです。
「デフレの正体」には書かれていない処方箋
デフレの正体に話を戻します。
この本では現状(2010年時点)の解決策として
1)高齢者から若者への所得移転
2)女性就労拡大
3)外国人観光客を増やし、観光収入をUP
の3点を提唱されています。1)はなかなか難しい問題ですが、2)や3)は今となっては当たり前の話です。
当時、人口推移から景気要因を分析されたのは画期的なことでした。このことを認識しているか否かが、その後の施策に大きな影響を与えます。
この後、「里山資本主義」、「観光立国の正体」と著書が最新版になっていくに連れ、地方の成功事例、失敗事例の話が増えてきます。そんな中、言われ始めたキーワードが
地消地産
です。
「デフレの正体」の時点では書かれていなかった処方箋です。
地産地消ではなく地消地産。
地産地消が地域で生産された農作物を地域で消費するという「生産」起点になっているのに対し、地消地産とは地域で消費する農作物を地域で生産するという「消費」起点です。
例えば我々宿が仕入れの全てを地域の商店で行なった。その商店は全て地域の生産者から仕入れている。全ての仕入れをそうする事はできませんが、少しでもお金を地域内で回す努力をする。
地産外消ではなく地産地消する事で、この地に来ないと手に入れられない、食べられないモノ、コトを増やす。
今だけ、ここだけ、あなただけ
と言える観光資源を増やしていく地方が今後生き残っていく。
人口は減ります。これはどうしようもない。買う人を増やせませんから、観光を核として域内消費を増やし、経済循環を作る事でお金を回し、内需拡大を実感する必要があります。
これを実現させ、成功させたのがスイスのツェルマットであり、桂一郎先生がコンサルタントとして関与している地域はこの方向性を目指しています。
地元で仕入れると高い?
発想を変えるべきです。
地元の産品を使うから高くで販売できる。
地方での観光は観光業者だけでやるものではありません。全ての産業の総力戦です。自分の業界だけ、自分のお店、宿だけ儲かっていれば良いという事業者の多い地域に未来はありません。
高くても地元のモノを買う。地元の仕入れ業者から買う。
この考え方を徹底し、小さな町でも内需を拡大させる努力をすることです。
このことを理解した上で桂一郎先生の話を聞けば、何の違和感もありません。
人口減少の現実→地消地産
まずは人口減少の現実を知るために、「デフレの正体」を読みましょう。10年前、「デフレの正体」が発売された時、「トンデモ本」と言われていました。でも、今読み返すと当たり前の事が多いです。
ということは、今藻谷先生や桂一郎先生が言っている事は、5年後、10年後には当たり前の事なのです。
数字で客観的に判断することの重要性も認識できます。
同時にSY(数字が読めない)から脱却すること。
「デフレの正体」を読んでおけば、桂一郎先生の話もスゥーっと頭に入ってくるはずです。
令和の時代となる前に。ぜひお読みいただくことをお勧めします。
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